掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

朝夕が涼しくなり、昼間との気温差がでてまいりました。こういう季節の変わり目はアトピー性疾患等の症状が出やすいので、アレルギー体質に方は、なるべく早くお医者さんで抗アレルギー剤を処方してもらいましょう。 さて、今回は掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)について書かせて頂きます。 掌蹠膿疱症の掌(しょう)は手のひら、蹠(せき)は足の裏をさしています。その手のひらや足の裏に、左右対称に膿疱(うみ)が出現する40歳~50歳代に発症のピークのある皮膚の病気です(写真参照)。

症状

大きさ1~5mm程度の小水疱や膿疱ができ、その周囲に赤い炎症反応がみられます。膿疱の中には菌は存在せず、また小水疱には水虫の菌はいません。 これらは、やがてかさぶたになり、脱落していきますが、しばらくすると、また透明な水疱や黄色の小膿疱の出現を繰り返します。かゆみは感じる場合もありますが、多くの人はないようです。また、わずかではありますが、つめ水虫に似た爪の変形が見られます。
また、皮膚以外に、鎖骨を中心に骨や関節が痛くなる患者さんもおられます。

好発部位

手のひらは、その中央部、母指球、小指球、足は足踏まず、かかと、足の縁などがあります。まれではありますが、膝にみられることがあります。

病気の原因

扁桃炎、虫歯、副鼻腔炎、中耳炎など慢性的感染症(病巣感染)や歯科金属などの金属アレルギーが原因ではないかと言われております。最近患者さんの多くが喫煙者であることから、喫煙との関連が注目されています。

治療方法

治療でまず試みるのは、外用薬や内服薬での治療です。主に中心となるのは、外用療法です。外用薬としては、炎症を抑えるステロイド外用薬、皮膚が形成される過程の異常を正常にしたり、膿疱の出現を抑えるビタミンD3外用薬、硬くなった皮膚をやわらかくするためのサルチル酸ワセリンなどを使います。
病状が強い人には、内服治療をおこないます。特に外用ステロイド剤に反応の悪い人は、少量のステロイドの内服を行う場合もあります。その他、病巣感染を治すために抗生剤の内服、皮膚の形成異常を改善するためのビタミンA誘導体の内服、かゆみのある人は抗アレルギー薬を内服いたします。その他、効果のある治療としては、紫外線による治療があります。光に対する感受性を高める外用薬を塗布後、長波長紫外線UVAを照射したり、特定領域UVAを狭い範囲に照射するエキシマライトなどがあります。慢性的な扁桃炎をお持ちの患者さんは、扁桃腺を摘出することで、症状が改善することがみられます。虫歯にも同様のことが言えるかと思います。
歯科金属アレルギーにより、掌蹠膿疱症が出現している患者さんは、歯科金属を除去(アレルギーの起こらないものに交換)する方法もあります。

最近のトピックスとして、掌蹠膿疱症と喫煙の関係があります。掌蹠膿疱症の患者さんは喫煙者が多いようです。何人かの患者さんは禁煙することで、症状が軽快しております。健康のためにも禁煙することをおすすめします。

帯状疱疹後神経痛とは?

毎日暑い日がつづいておりますが、皆さん体調はいかがでしょうか?猛暑がつづくと、体が疲れやすくなるものです。その結果、免疫力が落ち、夏風邪などをひいてしまいます。我々皮膚科の外来には、帯状疱疹の患者さんが気のせいか多い気がします。今回は、その帯状疱疹、特に帯状疱疹後に起こる神経痛について少しお話いたします。

  1. 帯状疱疹は、幼少期などにかかった水ぼうそうのウイルスが背骨の神経の中に何年も潜んでおり、ストレスなどで体が疲れ、免疫力が低下した時に発症します。帯状疱疹の症状としては、痛みと小さな水ぶくれが出現します。この症状は、抗ウイルス剤の内服で治りますが、ご高齢の方などは、皮膚の症状が消えた後も傷みが残る場合があります。これを帯状疱疹後神経痛といいます。
  2. なぜ痛みがあるのでしょう?この痛みは、皮膚症状が出現する前に現れることが多く、ウイルスが神経を傷つけるために起こるのです。ピリピリとした痛みで、服がすれただけでもかなりの痛みを感じます。しかし、若い人などは、夜間はよく寝れたり、何かに集中しているときは痛みを感じないことが多いようです。
  3. 帯状疱疹は抗ウイルス剤という決まった治療法がありますが、帯状疱疹後神経痛に関しては決まった治療法はありません。
    それぞれの患者さんに合った治療法が選ばれ、組み合わされているのが現状です。また、治療を一回、二回受けたからすぐに軽快することはまれであるため、前向きに考え、根気よく治療を続けることが必要であります。
    治療内容ですが、内服治療薬は三環系抗うつ薬、抗てんかん薬(ガバペチン)や抗けいれん薬(ペレガバリン)があります。現在、非ステロイド抗炎症剤(NSAIDS)は効果がないと考えられております。 持続性の痛み対策として、体性神経ブロック、イオントフォレーシス、低出力レーザー治療が行われております。(当クリニックでは施行不可能なので大学病院等に紹介しております。
  4. 家庭における対処法として、
    入浴:体が温まり血液循環がよくなるので痛みがやわらぎます。他の病気で入浴制限がなければ、積極的に入浴することをお勧めします。
    保温:寒さは痛みを増強させる為、冬には使い捨てカイロなどで保温し、夏には冷房の冷たい風は直接あたらないようにしましょう。
    患部刺激:痛みに過敏になっている時は、衣服などが触れただけでも痛みを感じることがあります。痛みを感じる患部に、サラシや包帯を巻いたりしてから、衣服をきるなど工夫するとよいでしょう。ストレス・疲労:痛みが気になり、不安になり、そのストレスから痛みが増強すると言うことがあります。
    痛み以外のことに気が向くように、趣味や仕事に熱中することは重要と考えます。くれぐれも、家にひとり閉じこもらないようにしましょう。
    夜は睡眠を十分にとつて、リラックスするように心がけましょう。 

いぼについて

春も終わりそろそろ梅雨かなと思ったところ、いきなり真夏日がつづいた今日この頃ですが、みなさまの皮膚のコンデションはいかがでしょうか?
さて今回は“いぼ”という皮膚病について書きたいと思います。 よく外来診察をしていますと患者さまから「いぼができました」という言葉をいただきますが、そもそも“いぼ”とはどういうものか?
“いぼ”とは、表面にできた突起物をさす俗語であります。われわれ医師の間では、疣贅(ゆうぜい)という言葉が使われます。ですがこの疣贅の中にも実は、たくさんの種類があるのであります。その多くはウイルス性のものが多く、診察で医師が“いぼ”というと、多くがこのウイルス感染によってできるウイルス性疣贅と考えてよいかと思います。

ウイルス性疣贅の種類

  1. 尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい):尋常性とは“ありあふれた”とか“ふつうの”とかの意味です。ですから、もっとも診察で多くみられる“いぼ”です。
  2. 扁平疣贅(へんぺいゆうぜい):皮膚からの盛り上がりがあまりない“いぼ”です。青年性扁平疣贅とも言います。原因としては、髭剃りなどによる小さな傷、状態の悪いアトピー性皮膚炎などが考えられます。
  3. 足低疣贅(そくていゆうぜい):尋常性疣贅の一種ですが、足底は角質が厚く、絶えずふみつけられるためか皮膚にめりこんでおり、治療は難治です。 よくこの”いぼ“と間違われるものに、ウオノメ(正式名鶏眼(けいがん)と言います)やタコ(正式名胼胝腫(ベンチ腫)と言います)がありますが、これらはウイルスとは関係なく、履物が合わないなど、皮膚の一定部位に摩擦や圧迫などの異常刺激の繰り返しで、出現いたします。
  4. 指状・糸状疣贅(しじょうゆうぜい);これも尋常性疣贅の仲間ですが、顔や頭にできた場合は、指をすぼめた手に見えるものが指状疣贅、更に細かいものを糸状疣贅と呼んでいます。

    その他に、外陰部や肛門に生じるもので、尖圭(せんけい)コンジローマなる“いぼ”もあります。これは、性感染症の一種であります。 また、“いぼ”と呼ばれるものの中で紛らわしいものに、“みずいぼ”(正式名伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)があります。これは、ウイルス感染でできるところは、ウイルス性疣贅と似ておりますが、伝染性軟属腫ウイルスという全く別のウイルスが原因です。形としては、てっぺんが少しへこみのある小さな盛り上がりです。表面がツルツルして水様の透明感のあることから“みずいぼ”と呼ばれています。 ウイルス性とは違うものですが、外来でよく高齢の患者さまより「この“いぼ”とって」と言われるものに、老人性疣贅、別名脂漏性角化症なるものもあります。中高年の頭や顔、背中や胸に多い良性腫瘍の一種です。

    以上、述べましたように、“いぼ”とはわれわれ医師の間では、主にウイルス性のもを指しますが、世間一般で“いぼ”と言われるものの中にはそうでないものも含まれることが理解していただけたでしょうか? また、その治療が、液体窒素や電気焼灼などの外科的処置、サルチル酸外用薬や尿素軟膏による外用療法やヨクイニンの内服療法から、それぞれの患者さまに、適したもので治療を行っております。
    気になる方は、くれぐれも素人判断せず、医師の診察を受けましょう。

    保湿剤の重要性について

    アトピー性皮膚炎において、かゆみによるスクラッチ(掻破)行動を我慢することは、なかなか至難のワザであります。人はかゆみが起これば自然に掻破行動を起こします。それにより、皮膚のバリア機能は悪化し、アレルギー反応をおこすアレルゲンの浸入がおこります。これを繰り返すことで、皮膚において炎症をおこす細胞が誘導されて、皮膚炎の重症化・遷延化がおこります。これを、我々皮膚科医の間では“イッチ(かゆみ)スクラッチ(掻破)サイクル”と呼んでいます。この悪循環を断つことがアトピー性皮膚炎の治療おいて重要と考えております。また、アトピー性皮膚炎ではフィラグリン遺伝子の異常、角層間脂質であるセラミドの減少、および角層内アミノ酸などの天然保湿因子の低下があることが明らかとなり、皮膚の乾燥やかゆみの原因となることもわかってまいりました。この皮膚の乾燥、ドライスキンを治療しておくことが、アトピー性皮膚炎の増悪を予防するものと考えております。もちろん、ステロイド外用剤の塗布が、第一選択の位置にあることが前提であります。
    ドライスキンの治療としては、頻回の保湿剤の外用があります。特に冬のこの時期は、アトピー体質のひとだけではなく、健常人にも必要かと思います。
    保湿剤を外用する利点のひとつは、角層の水分量を増やして乾燥を防ぐことで、かゆみの増悪を防ぎます。もうひとつの利点は、外からのアレルゲンの浸入を抑制する可能性があります。
    アトピー性皮膚炎では、汗をかくとかゆくなることがあります。自分の汗に対する過敏反応と考えられており、保湿剤の使用は、これらの汗による過敏反応を起こす物質の浸入を、防ぐ効果もあると思われます。
    さらに実験で保湿剤の使用は、皮膚の乾燥によって増加する皮膚のヒスタミン量を減少させることも明らかになっております。
    一方で、アトピー性皮膚炎を増悪させることが知られているストレスは、皮膚のバリア機能を低下させることがあるようです、アトピー性皮膚炎の治療を行っていく上で、保湿剤の外用も大切ですが、心身的にも健康であることを付け加えておきます。

    患者さまから、外用剤の塗り方についてよく質問がありますので、
    以下に図示しておきますので、ぜひ参考にしてください。

    巻き爪と陥入爪

    爪のカーブが強くなりすぎてユビの肉を巻き込んでしまう状態を巻き爪と 言います。また爪のかどが周りの肉に食い込んで炎症を起こしている状態を陥入爪と呼びます。陥入爪を起こす人の大部分は程度の差はありますが巻き爪を持っています。陥入爪になると痛いので食い込んでいる爪のかどを切る人が多いのですが、これをすると一時的に痛みは取れますが爪が伸びてくると巻き爪がさらに進んでより重症の巻き爪になり、陥入爪を再発して、ひどくなると爪の周りの肉が盛り上がって出血するようになってしまいます。

    巻き爪は先の細い靴を長時間履くことが原因になることが多いのですが、そのほか深爪やゆび先の外傷も原因になります。爪は見た目に見える部分を爪甲、その下側を爪床、さらに爪の根本の皮膚に隠れている部分を爪母と呼びます。爪母は皮膚の一部で、そこが硬くなって爪となりのびてきますが、爪母の役目は皮膚を爪に変えることだけですから,先の細い靴を履いたりして爪母に外圧がかかると容易に変形した爪になって生えてきます。

    巻き爪の根本的治療としては、以前は爪母の変形している部分をフェノールという薬物で破壊したり、爪母を削って爪を細くする手術をしたりしていました。しかしこの方法だと爪の巾が細くなってしまい、痛みは取れますが外観が見苦しくなり人前に足が出しにくくなる難点がありました。

    新しい巻き爪の治療法として形状記憶合金を爪に装着して、巻き込んで生えてくる爪を平らになおしてやる方法が考え出されました。この方法はまだ健康保険では認められていませんがなかなか良い方法です。詳細は
    http://www.tama-medical.com/
    当院でもこの治療をおこなっています。

    治療前
    治療後

    超弾性ワイヤー(マチワイヤ)を用いた巻き爪、陥入爪の治療

    料金

    初診料3,000円
    再治療1,500円
    ワイヤー1本4,000円
    処置料1,000円