アトピー性皮膚炎治療の新たな選択肢

平素より、おばた駅皮フ科クリニックのコロナ感染対策にご協力いただきまして大変感謝しております。
今回は、アトピー性皮膚炎(以下AD)の生物学的製剤とJAK阻害薬の治療についてお話します。
生物化学製剤の治療と言えば、リユウマチや難治性の乾蘚というイメージがありましたが、昨今は重症のAD患者さんにも積極的に投与され、かなりの治療成績を上げております。
当クリニックでも、3年前に承認された、自己注射による生物学的製剤デュピクセントを、積極的に治療に取り入れ、多くの患者さんが寛解しております。しかしながら、自己注射という事で、注射が苦手という方には敬遠されているのも実情です。
この度、内服液で生物学的製剤と同等の効果がある、JAK阻害薬のリンヴォックがAD治療の適応を受けました。

リンヴォックの特性は以下のとおりです。

  1. ADの病態形成に関与するJAKを選択的に阻害します。
    (JAKは炎症応答、造血、免疫監視を含む広範囲の細胞プロセスに関与する細胞内酵素です)
  2. 成人に加え、12歳以上のAD患者さんにも適応承認された、1日1回投与で、服用時間の制限のない、用量調節可能な経口薬です。
  3. 臨床試験(国際共同第Ⅲ相試験)において、中等症から重症のADの症状を改善しました。
  4. 関節リユウマチや関節性乾癬においての使用経験がある薬剤
  5. 上記よりある程度の安全性は確保されています。
    ある程度という事は、当然副作用や投与禁忌の患者さんがいるのも事実です。
    リンヴォック投与により、結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染による感染症の発現又は悪化等が報告されております。
    またリンヴォックとの関連は明らかではありませんが、悪性腫瘍の報告(0.4~0.7%)があります。
    我々としては、リンヴォックが疾患を完治させる薬剤でないことも含め、AD患者さんに十分な説明をし、ご理解して頂いた事を確認した上で、治療上の有益性があると判断して投与していく所存です。

高機能換気システム導入完了!

新型コロナウイルスの第3波が心配される中、皆様それぞれが対策を実践されていることと思います。私どものクリニックも、皆様に安心して受診して頂ける用に 新型コロナウイルスによる世界的騒動は、1年たった今も収束の兆しが見えない状況です。当クリニックも、患者さまやスタッフをこのウイルスから守る為、さまざまな対策をとってまいりました。この度、通常の換気システムをクレードアップした、ダイキン製ベンティエールへの交換工事を完了いたしました。
この換気システムのポイントは、以下の3つです。

  1. 吸気と排気を同時に行い、しっかり空気の入れ替えを行う
  2. フィルターで外気のホコリや花粉をブロックします
  3. 外気を室温に近づけて取り込み、常に快適な環境を提供します

当クリニックでは日本医師会の提言に沿った以下のことに注意しながら、皮膚科の診療にあたっております。

  • 職員に対して、サージカルマスクの着用、手指衛生を適切に実施しています。
  • 職員に対して、毎日の検温等の健康管理を適切に実施しています。
  • 職員が体調不良を訴えた場合は、適切な対応を講じています。
  • 患者さま、取引業者に対して、マスクの着用、手指衛生の適切な実施を指導しています。
  • 発熱患者への対応として、事前に連絡をいただき、対応出来る医療機関へ紹介する等の対策を講じています。
  • 受付における感染予防策(遮蔽物の設置等)を講じています。
  • 患者間が、一定の距離が保てるよう必要な措置を講じています。
  • 共有部分、共用物等の消毒、換気等を適時、適切に実地しています。
  • マスク等を、廃棄する際の適切な方法を講じています。
    今後も、最善の医療を提供できるよう、努力して参りますので、宜しくお願いいたします。

原発性腋窩多汗症の新しい治療

新型コロナウイルスの第3波が心配される中、皆様それぞれが対策を実践されていることと思います。私どものクリニックも、皆様に安心して受診して頂ける用に努力しております。
その中でも、脇汗で苦労されている方も多いと思います。この度、そのお悩みに終止符を打つべく、『原発性腋窩多汗症』の治療薬として、エクロックゲルが認可されました。
そもそも『原発性腋窩多汗症』とは何か?
特に基礎疾患がないにも関わらず、大量の脇汗に悩まされる方です、以下のうちの6症状のうち2項目以上当てはまれば『原発性腋窩多汗症』と診断しております、

  1. 最初に症状が出たのは25歳以下である
  2. 左右両方で同じ様に発汗がみられる
  3. 睡眠中は発汗が止まってしまう
  4. 一週間に一回以上多汗の症状がでている
  5. 家族にも同様の患者さんがいる
  6. 脇汗によって日常生活に支障をきたす

治療法の選択のためには、多汗症の症状の評価が必要です、
以下の1~4の中からあてはまる症状を選ぶ方法で、自覚症状を基に重症度を評価できます。
3~4が重症とされます。

  1. 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
  2. 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
  3. 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
  4. 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある

『原発性腋窩多汗症』の治療法には、以下のものがあります。

  1. 汗の出口を塞ぐ働きのある塩化アルミニウム製剤を、わきに塗布する。
  2. 汗を出す指令を伝える神経に作用するA型ボツリヌス毒素を、わきに注射する。
  3. 汗をです指令を伝える神経を、手術にて切断する方法

その他神経ブロック、レーザー治療、内服療法、心理療法が上記3つに併用される事があります。
今回、新たに外用療法の一つとして、エクロックゲルが加わることになります。

エクロックゲルの作用機序

エコロックゲルは、有効成分が皮膚から浸透して、エクリン汗腺(皮膚の中にある汗を作る器官ののひとつ)の汗をかくという指令を受け取る部分をブロックすることで、発汗を抑えることが期待できます。

エクロックゲルの使い方

一日一回、以下の手順で両わき全体に塗布します。

  1. わきの水気をタオルなどでよく拭き取るます。
  2. ボトルからキャップを外した後、アプリケーターを外します。
  3. ポンプを押して、アプリケーターの上面に薬液をのせます。
  4. アプリケーターにのせた薬液をわき全体に塗り広げます。
  5. アプリケーターに残った薬液は、ティッシュペーパー等で拭き取るか、洗い流してください。

    使用上の注意点としては

    薬液を塗った後は、乾くまでは寝具や衣服が触れないように注意して下さい。
    緑内障や前立腺肥大症の方、わきに傷などがある方、妊娠や授乳中の方は、あらかじめ医師にお伝え下さい。

          アトピー性皮膚炎の新しい外用薬

          新型コロナウイルスによる世界的騒動も終息が見えない状況ですが、その様な中、アトピー性皮膚炎患者さんには、嬉しいお知らせです。
          アトピー性皮膚炎の治療は、「薬物療法」「スキンケア」「原因や、悪化させる因子への対策」の3点が基本になります。その薬物療法の中でも、炎症を抑える外用剤のメインとして、ステロイド外用剤が使われてきました。
          この度、ステロイド外用剤とは違う、ヤヌスキナーゼ(以下JAK)阻害剤であるコレクチム軟膏が処方可能となりました。
          コレクチム軟膏は、アトピー性皮膚炎(以下AD)の治療において、従来のステロイド外用剤や、免疫抑制外用剤とは異なる作用機序で、ADの症状を和らげる新しいお薬です。
          ADの病態には、サイトカインと呼ばれる物質が関与しています。サイトカイン(IL-4IL-13IL-31etc)が、免疫細胞や神経にある「受容体」という受け皿につくと、JAKなどのシグナル経路が活性化され、炎症や痒みを引き起します。
          コレクチム軟膏は、皮膚から浸透して、細胞内のJAK経路から伝達される炎症を引き起こすシグナルを、ブロックすることで、皮膚の炎症や痒みを抑えて、ADを改善します。

          コレクチム軟膏の用法は、1日2回、痒みのある患部に適量を塗ります。
          *この場合の適量は、人差し指の先端から第一関節まで出した量が約0.5gです。
           この量を「1FTU」と言います。この量で、手のひら2枚分くらいの面積に塗ることができます。
          1回に塗る量は5gまでとします。目や鼻などの粘膜、皮膚のキズやAD以外の炎症には使わないでください。万一目に入った場合は、すぐに洗い流してください。
          薬を使って気になる変化、逆に4週間使用しても症状に変わりが無い場合は、主治医に相談してください。
          コレクチム軟膏を塗りわすれた場合、決して2回分を一度に塗らないで下さい。
          塗り忘れに気が付いた場合は「1回分」を塗ってください。ただし、次の塗る時間が近い場合は、「1回目」の使用はせず、予め決められていた次の時間に「1回分」を塗って下さい。
          アトピー性皮膚炎は増悪軽快をくり返す疾患です。症状が軽快しても、目に見えない炎症が残っている事があります。
          自己判断で中止せずにしっかりと塗り続けましょう。気になることがありましたら、我々皮膚科医にご相談ください。
          ※当クリニックは、患者様を新型コロナウイルスから守るため、マスク着用の呼びかけ、クリニックに立ち入る際の検温をさせて頂いています。また待合室の3密を避けるため、自動ドアを開放し、座席の間隔を空けて利用していただいています。万が一密な時は、患者様の携帯番号を控えて、順番が近くなるとコールするなど感染対策を行っております。

          コロナウイルスと皮膚症状

          コロナウイルスによる世界的騒動も、この日本に関しては一時的な収束をみせてきました。(この原稿を書いている最中も愛知県の緊急事態宣言は解除されたようです)
          このウイルスは主に肺炎を起こしてきましたが、時間の経過と共に、このウイルスは全身の血管が標的のように考えられるようになり、我々皮膚科医にも、注意しなければならない症状も報告されるようになりました。
          新型コロナウイルス感染症に伴う発疹は様々なものが報告されるようになり、
          その代表的なものは「コロナのつま先」と呼ばれるしもやけのような病変と、子供にみられる川崎病のような症状があります。
          イタリアのある報告では20%の患者に発疹が見られたこともありますが、武漢での研究では0.2%にしか認められなかったとするものもあります。これはウイルスの変異によるものなのか、現段階では謎であります。
          「コロナのつま先」に関しても、ウイルス検査では陽性になった人のみではなく、ウイルス検査で陰性の人にも同様の皮疹が見られたようです。
          また、川崎病のような症状というのは、全身の発疹、手足や首のリンパ節の腫れ、目の充血、腹痛、下痢などです。川崎病は日本人の子供に多くみられ、全身の血管に炎症を引き起こすまれな疾患です。通常は、自然治癒が多い疾患ですが、1~2%に心臓の重大な合併症を生じることがあるので注意が必要です。
          専門家によれば、このような病状はヨーロッパや北米の子供にしか観察されておらず、ウイルス検査が陰性で、過去の感染を示唆する抗体もない子供もいることから、全ての症例が、新型コロナウイルス感染と関連すると判断するのは、難しいようです。答えを見つけるには、患者を総合的に調べるだけでなく、検査や臨床試験へのアクセスの改善も必要だと専門家は指摘します。専門家たちは、この感染症への明らかな答えが出るまでは、屋外でのマスクの着用、念入りな手洗い(出来ればうがいも)、フィジカル(ソーシャル)ディスタンスの確保などの標準的な対策を続けることであるとしております。
          当クリニックに受診される際は、マスク着用の御協力をよろしくお願いします。