保湿剤の重要性について

アトピー性皮膚炎において、かゆみによるスクラッチ(掻破)行動を我慢することは、なかなか至難のワザであります。人はかゆみが起これば自然に掻破行動を起こします。それにより、皮膚のバリア機能は悪化し、アレルギー反応をおこすアレルゲンの浸入がおこります。これを繰り返すことで、皮膚において炎症をおこす細胞が誘導されて、皮膚炎の重症化・遷延化がおこります。これを、我々皮膚科医の間では“イッチ(かゆみ)スクラッチ(掻破)サイクル”と呼んでいます。この悪循環を断つことがアトピー性皮膚炎の治療おいて重要と考えております。また、アトピー性皮膚炎ではフィラグリン遺伝子の異常、角層間脂質であるセラミドの減少、および角層内アミノ酸などの天然保湿因子の低下があることが明らかとなり、皮膚の乾燥やかゆみの原因となることもわかってまいりました。この皮膚の乾燥、ドライスキンを治療しておくことが、アトピー性皮膚炎の増悪を予防するものと考えております。もちろん、ステロイド外用剤の塗布が、第一選択の位置にあることが前提であります。
ドライスキンの治療としては、頻回の保湿剤の外用があります。特に冬のこの時期は、アトピー体質のひとだけではなく、健常人にも必要かと思います。
保湿剤を外用する利点のひとつは、角層の水分量を増やして乾燥を防ぐことで、かゆみの増悪を防ぎます。もうひとつの利点は、外からのアレルゲンの浸入を抑制する可能性があります。
アトピー性皮膚炎では、汗をかくとかゆくなることがあります。自分の汗に対する過敏反応と考えられており、保湿剤の使用は、これらの汗による過敏反応を起こす物質の浸入を、防ぐ効果もあると思われます。
さらに実験で保湿剤の使用は、皮膚の乾燥によって増加する皮膚のヒスタミン量を減少させることも明らかになっております。
一方で、アトピー性皮膚炎を増悪させることが知られているストレスは、皮膚のバリア機能を低下させることがあるようです、アトピー性皮膚炎の治療を行っていく上で、保湿剤の外用も大切ですが、心身的にも健康であることを付け加えておきます。

患者さまから、外用剤の塗り方についてよく質問がありますので、
以下に図示しておきますので、ぜひ参考にしてください。

巻き爪と陥入爪

爪のカーブが強くなりすぎてユビの肉を巻き込んでしまう状態を巻き爪と 言います。また爪のかどが周りの肉に食い込んで炎症を起こしている状態を陥入爪と呼びます。陥入爪を起こす人の大部分は程度の差はありますが巻き爪を持っています。陥入爪になると痛いので食い込んでいる爪のかどを切る人が多いのですが、これをすると一時的に痛みは取れますが爪が伸びてくると巻き爪がさらに進んでより重症の巻き爪になり、陥入爪を再発して、ひどくなると爪の周りの肉が盛り上がって出血するようになってしまいます。

巻き爪は先の細い靴を長時間履くことが原因になることが多いのですが、そのほか深爪やゆび先の外傷も原因になります。爪は見た目に見える部分を爪甲、その下側を爪床、さらに爪の根本の皮膚に隠れている部分を爪母と呼びます。爪母は皮膚の一部で、そこが硬くなって爪となりのびてきますが、爪母の役目は皮膚を爪に変えることだけですから,先の細い靴を履いたりして爪母に外圧がかかると容易に変形した爪になって生えてきます。

巻き爪の根本的治療としては、以前は爪母の変形している部分をフェノールという薬物で破壊したり、爪母を削って爪を細くする手術をしたりしていました。しかしこの方法だと爪の巾が細くなってしまい、痛みは取れますが外観が見苦しくなり人前に足が出しにくくなる難点がありました。

新しい巻き爪の治療法として形状記憶合金を爪に装着して、巻き込んで生えてくる爪を平らになおしてやる方法が考え出されました。この方法はまだ健康保険では認められていませんがなかなか良い方法です。詳細は
http://www.tama-medical.com/
当院でもこの治療をおこなっています。

治療前
治療後

超弾性ワイヤー(マチワイヤ)を用いた巻き爪、陥入爪の治療

料金

初診料3,000円
再治療1,500円
ワイヤー1本4,000円
処置料1,000円