冬将軍到来で、ぼちぼちと寒い日が多くなって参りましたが、みなさまの皮膚の状態はいかがでしょうか?今回は、季節的に増加している質問であります、乳幼児のスキンケアについてのお話です。
乳幼児の皮膚の特徴
乳幼児の皮膚は、新生児期をのぞいて、角質の水分量や皮脂の分泌量は成人より少ないと言われております。また、皮膚が薄く、バリア機能が未熟なため、外からの細菌や異物を容易に侵入させてしまいます。
他に汗腺の密度が高いので、汗をかきやすいとも言えます。
乳幼児に見られる皮膚疾患
- あせも 汗をかきすぎたりすると、汗腺のつまりを起こし、赤い小さな皮疹が出てきます。冬でも、暖房や服の着させすぎなどで起こります。
 
- 乳児湿疹 赤ちゃんの皮膚は未熟な部分が多いので、ちょっとした環境の変化で炎症が起こりやすいのです。
 
- おむつかぶれ 排尿や排便後しばらく処置をせずにいると、炎症が出現してきます。また、おむつとの摩擦も炎症の原因になります。
 
- 乳児寄生菌性紅班 上記と似た症状に、便中のカンジタ菌という真菌に感染して起こります。
 
- アトピー性皮膚炎 体質的に皮膚のバリア異常のために、異物(アレルゲン)の浸入や機械的刺激により、皮膚に炎症が起こる状態です。この状態が長く続くことがアトピー性皮膚炎の診断基準となります。
 
乳幼児のスキンケア
皮膚のトラブルを防ぐには、スキンケアが重要です。
基本は、“洗浄”、“保湿”、“紫外線対策”、の三つが基本です。
- 体・顔の洗い方
石鹸は弱酸性低刺激のものをよく泡立てて、素手を使い、手のひらと指の腹できちんと洗う。外遊び等で手足を汚した時は、肌触りのよい素材のタオルを使って洗う。ゴシゴシこすらずやさしくが基本です。
首や脇の下などのしわの部分は、奥までていねいに洗う。
顔も石鹸を使います。よく泡立てれば目にも入りにくいです。すすぎは、ていねいに何度かおこない、すすぎが終わったら、乾いたタオルでこすらずそっと押さえるように水分をふき取る。しわの中の水分は残りやすいので気をつけましょう。石鹸が残ると皮膚を刺激するもとになります。 
- 保湿剤で皮膚にうるおいを
入浴後はなるべく早く保湿剤を塗布しましょう。やさしく話しかけながらマッサージするようにやさしく塗り広げます。塗る順番は、顔→お腹→背中→手足がよいでしょう。
保湿剤は、人差し指の指先から第一関節まで(液体ものは1円玉大)の量で大人の手のひら2枚分の面積に塗れる量と言われております。 
- 紫外線対策 紫外線は冬でも降り注いでいます。3月頃から増え始め6~7月が最も強くなります。時間帯としては、午前10時~午後2時頃までに1日の半分以上の紫外線が降り注ぐと言われております。 紫外線対策の基本は、帽子をかぶせ、日陰を選んで遊ばせ、日焼け止めをしっかり塗ることかと思います。
日焼け止めの塗り方としては、清潔な皮膚に、子供用の日焼け止めをムラなく(日焼けしやすい額、鼻、首の後ろは念入りに)塗ってください。塗る量の目安としては、顔の場合は、クリームならパール粒1個分、ローションなら1円玉1個分の量を顔に5ヶ所に置いて伸ばします。 手・足など広く塗る場合は、つける場所に直接的につけ、手のひらを使って大きく円を描くように伸ばしましょう。 
これらのことが全てでは在りませんが、上記のことを参考にお子さんのスキンケアをおこなってみてください。それでも、皮膚トラブルがある場合は、早めの受診でよい状態に戻しましよう!
					 
					
				
			
				
					
					
						
すっかり秋になり、朝夕の冷え込みがでてまいりました。そうなると皮膚科の待ち合いも、さみしくなってまいります。忙しかった夏は、ついつい患者さんに専門用語で病気の説明をしてしまい、その節は、大変申し訳ございませんでした。今回は、それに関連して皮膚科の病名由来などについて書こうかと思います。
アトピー
アトピーと言う言葉は、広く知られた言葉で、皮膚科ではアトピー性皮膚炎がホピュラーであります。語源は、ギリシャ語のatopia(異常な)から来ております。
これはa(否定)とtopos(場所)の組み合わせで、本来の場所にない、つまり、“異常”なとか“不思議”なという意味から派生した言葉です。ですから、アトピー性皮膚炎は、つかみ所のない(症状に個人差のある)、治療に苦労する奇妙な病気と言う意味でしょうか?
肝斑
日本語では“かんぱん”と言うより“しみ”と言ったほうがわかりやすいでしょう。30歳~40歳の女性の顔面に左右対称に生じる、褐色斑です。独語ではLeberfieck,肝臓の色に似ているからだそうです。日本語は、これを、ダイレクトに訳したのでしょう。
アフタ
口内などの粘膜円形で扁豆大までの境界鮮明な炎症面で、周囲が赤くなり、表面に白色ないし黄色の偽膜を付着するものであります。原因として機械的刺激(入れ歯等)、ウイルス性やベーチェット病などさまざまです。再発しやすいのが特徴です。
語源は、ギリシア語のaphthai(炎症、潰瘍)からきているようです。これは症状であって、疾患ではないですが繰り返し発症していると、カルテ等には、“再発生アフダ”または“アフタ性口内炎”と書いております。
鶏眼
一般的に“ウオノメ”(魚の目)と呼ばれています。これは独語のHohneraugeの直訳です。足趾間などに生じる圧痛のある角化塊で、中心が隆起しております。この部分は、円錐状に真皮深層に刺入しており、最初は圧迫による不愉快感があり、その後次第に歩行時に激痛が出現します。原因は、足への持続性圧迫による変形、摩擦が考えられます。治療は、軟化および除去です。
胼胝
上記の“ウオノメ”の類似疾患で、“たこ”とよばれております。これは、英語でも独語でもtylosis,、「結び目、こぶ等」を意味するtyloに由来しているようです。好発部位は、手掌、指腹、足底など常に圧迫される場所に、防御機転として起こる角質の増殖です。この増殖した角質は刺入はしないので、鶏眼よりは痛みは少ないかと思います。治療は、軟化および除去、その後は、原因を避ける生活であります。
白癬菌(症)
通称タムシ、水虫の原因菌、真菌(カビ)の一種で、人に感染する糸状菌は10数種が知られておりますが、中でもTricophyton rubrunとTricophyton mentagrophytesとで8割を占めております。いずれもケラチン(各層の主成分の蛋白)分解能を有することで、硬い爪や角質への寄生が可能となっています。
感染する部位や深さなどで、浅在性真菌症と深在性真菌症に分類されます。近年強力な抗真菌剤の出現で治療期間は短縮していますが、糖尿病などの基礎疾患があると難治であり、壊疽の原因になります。
しらくも
頭部白癬tinea capitisの俗称で浅在性白癬で頭部に生じたものを指します。
わが国では古くから小児頭瘡を、『しらくも』と俗称していたようですが、「明治30年頃から頭部断髪性疱疹ないし寄生性匐行疹という病名が使われるようになると、これらは『しらくも』とは別であると考えられていたようです。しかし明治37年に両者を統合して頭部白癬と称するようになりました。
その後、日本では頭部白癬という病名一つを使うようになりました。
アメリカでもtimea capitisとして一つにまとめましたが、これは頭部浅在性白癬とケルスス禿頭(深在性)をあわせた概念であり、わが国の頭部白癬が浅在性のみでケルスス禿頭は含まないところは異なるようです。
現在の治療は抗真菌剤内服でありますが、それ以前は抜毛による治療が主流のようです。
書き出したらきりがないので、今回はこの辺で終わりとさせて頂きます。
					 
					
				
			
				
					
					
						
いよいよ梅雨も明け、夏本番(子供達にとってはうれしい夏休み!)となりました。
今回は、昨年ニュースになりました、デング熱について話をしたいと思います。
デング熱(dengue fever)は、熱帯・亜熱帯とくに東南アジアの流行病言われていましたが、昨年、東京の代々木公園を中心に69年ぶりに国内での感染例が報告されました。その後、皆さんご承知の様に、全国各地で発症が確認され、社会問題に発展いたしました。
デング熱とは、教科書的にはネッタイシマカ(日本ではヒトスジシマカ)にさされて2~15日で突然の発熱と共に全身の倦怠感、関節の痛みとリンパ節の腫脹、胃腸障害、目の奥が痛くなったり、まぶしさを感じたりします。
発疹に関しては、発症初期は、びまん性に赤くなったり・小丘疹(皮膚表面より限局性に類隆起)が見られることもあり、後半には、麻疹(はしか)様や溶連菌感染時に見られる皮疹を呈することもあるようです。ですから、医師の間でも、麻疹や溶連菌感染症との区別に難渋いたします。これらの皮疹は、デングウイルスによるアレルギー反応と考えられています。
デングウイルスには4つの血清型(1型・2型・3型・4型)があります。昨年代々木公園などで確認されたのは1型のようです。これは、アジアで流行しているものと同じでした。小児では発熱に加え、出血傾向や肝障害を合併するデング出血熱と呼ばれる状態になることもあります。このデング出血熱の重症化は、2度目の感染が異なる血清型であったり、あるいはデング熱に対する免疫を持った母体から、出生した乳児の初感染の場合などで起こりやすいと報告されています。つまり、その感染したウイルスの血清型に対しては終生免疫を獲得しますが、他の血清型ではデング熱を発症します。
現時点で、デング熱に対して得意的な治療法はありません。個々の症状に対して対症療法を行なうのみです。解熱剤を使う場合、アスピリンを服用すると、デング熱の重症化に拍車をかけることになりますので、自己判断で解熱剤を内服せず、医療機関を受診のうえ、医師の処方したアセトアミノフエンを内服しましょう。アセトアミノフエンは副作用の誘導が少ないとされています。ワクチンは、年内の実用化をめざしているようです。
予防法ですが、我々のできることは、蚊に刺されないようにするしかないようです。野外で作業をすると木などは、肌を露出しない長袖のシャツや長ズボンの着用、虫よけスプレーや蚊取り線香などを使うことを心がけましょう。
また、蚊は色の濃いものに近づくようです、白や薄い色の服は更に効果的と思われます。
以上の事をふまえて、他の害虫にも気をつけて、楽しい夏を過ごしましよう。
					 
					
				
			
				
					
					
						
季節は夏に向かっており、徐々に汗ばむ季節となってまいりました。
今回は、その汗についてのお話です。
汗は、人間にとって大切な役割を担っています。
- 体温調整 体の熱を発散し、体温を下げます。
 
- 免疫調整 汗に含まれる物質が、細菌などから皮膚を守ります。
 
- 保湿 皮膚の水分量を保持し、うるおいを与えます。
 
人間が生きていく上で必要な汗ですが、以前は、アトピー性皮膚炎(以下AD)を悪化させる原因の一つと考えられてきました。ところが最近の新たな研究で、汗を十分にかけていない事が、ADを悪化させている原因の一つと言われています。
どういう事かといいますと、AD患者さんでは、発汗量が少なく、発汗するまでに時間がかかるといった特徴が見られるようです。またAD患者さんが発汗により痒みが起こるという不安から、自然と汗をかく機会を減らす、つまり、発汗量が少ない原因にもなっていると考えます。
このように、AD患者さんでは発汗量が少ないので、“汗“本来の働きが十分に発揮されることがないので、AD症状の悪化が起こると考えます。
つまり、汗をかくことで、皮膚にうるおいがもどり、汗に含まれる物質で皮膚を細胞から守り、皮膚の温度を下げ、皮膚の炎症の悪化を予防するのです。ただ汗をかいた時に、かゆみを感じるのも事実です。
では、いかに汗と上手に付き合うかですが、汗をかいたら、おしぼりで拭き取るか、シャワーや流水で洗い流すことを心がけましょう。
どうしても洗い流す事ができない状況なら、汗で濡れた衣装は、着替えるなどの対策をしましょう。汗を洗い流した後は、保湿剤の外用は忘れないようにしましょう。
特に、AD患者さんでは、汗を洗い流して終わるのではなく、医師から処方された、ステロイド外用薬、保湿剤の外用はしっかり行いましょう。
汗をかくためには、毎日40℃程度のお風呂に入るように、この温度は、皮膚のバリア機能を回復させると言われています。石鹸を使う時は、よく泡だて、過度に擦らず、十分に洗い流しましょう。
また、運動は激しいものを急に行うのではなく、軽いものからはじめ、休息をとり水分補給をしっかりして、熱中症には注意しましょう。
まとめ
以前は、アトピー性皮膚炎にとって、汗は、悪いものという印象がありました。しかし、汗の働きを考えると、人の生活において必要なものであります。アトピー性皮膚炎患者においては、治療をしっかりと行い、そのうえで、汗をかける日常生活をおくりましょう。
アトピー性皮膚炎の治療等でわからない事がある時は、われわれ皮膚科医に相談して下さい。
					 
					
				
			
				
					
					
						
季節ははるになり、お花見のシーズンになっていますが、同時にアレルギーの季節になったと言っても過言ではないでしょう。花粉症持ちの人には辛い季節です。
花粉症と言えば、鼻におこるアレルギー性鼻炎を思い浮かべる人が多いかと思いますが、他の症状として、目のかゆみ、喉のイガイガした感じや皮膚の露出した所のかゆみ(顔のかゆみ)などがあります。これらの原因(アレルゲン)として有名なのがスギ花粉です。しかし、実際のところスギ以外の多くの花粉やダニ、カビ、ペットなどのアレルゲンでもこれらの症状は起こっている可能性があります。もしかしたら症状を放置することで、季節に関係ない通年性アレルギーに移行している可能性があるかと思います。もし、花粉症かと思われる症状が出てきたら、なるべく早く病院を受診することをお勧めします。
ではどうしてアレルギー反応が起こるのでしょう。最近の皮膚の研究では、口や鼻からのアレルゲンの浸入だけでなく、皮膚もアレルギー発症のルートであることがわかってきました。皮膚は、単に異物から体を守る組織というイメージがありますが、アレルゲンが皮膚を介して体内に侵入し、アレルギー反応を引き起こすことがあるのです。これを、経皮感作といいます。
例えば、海外などでは、ピーナッツオイル入りのの保湿クリームを使用した子供や、家庭内に落ちているピーナッツのかけらなどが原因で、ピーナッツを食したことがない子供にピーナッツアレルギーが発症したという報告があります。日本では、小麦粉成分を含んだ洗顔石鹸を使用した人達に、突然小麦アレルギーがおこってしまう事件がありました。これも経皮感作によるものと考えられております。
では、なぜ経皮感作がおこるのでしょう?皮膚の最外層には、外質層があり、皮膚膜とともに色々な外敵から、身を守るバリアとして働いています。しかし、湿疹などの皮膚に異常が起こると、バリア機能がおかしくなり、外からの刺激に対して非常に過敏なってしまいます。つまり、様々なアレルギー物質が体内に侵入しやすくなるということです。このような事が、日々積み重なり経皮感作が起こると考えられています。
近年我々医師の間では、アレルギーマーチという言葉が使われております。これは、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎や喘息といった異なる症状が成長にともなって出現する状態です。この原因として、上記の皮膚のバリア機能障害が注目されております。経皮感作を起こさない為には、以下のことに注意しましょう。
- 皮膚のバリア機能を保持する為に・・・
- 石鹸の使い過ぎに注意しましょう。
 
- ナイロンタオルで強く擦るのはやめましょう。
 
- 乾燥肌の人は、入浴後に保湿剤を塗りましょう。
 
- 布団、ソフアー、クッション、むいぐるみなどに付着しているアレルギー物質などは、マメに掃除をしましょう。
 
 
- 乳児期に気おつけることとしては・・・
子供は、大人よりも保湿能力が低いので、外部の刺激に対して非常に敏感です。よだれや食べ物が、口の周りについたまま放置すると、そこから経皮感作が起こる可能性があるので、乳幼児の口の周りは、きれいにすることが大切です。