春から秋にかけてキャンプ、畑仕事など山や草むらでの活動が多くなる季節です。そういった野外活動の際は、“マダニ”に注意しましょう。
野山等に生息する“マダニ”に咬まれることで、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、ダニ媒介脳炎、日本紅班熱、ツツガムシ病、ライム病などに感染することがあります。“マダニ”に咬まれない為にも以下の点に注意しましょう。
●肌の露出を少なくする(帽子、手袋を着用し、首にはタオルを巻く)
●長袖・長ズボン・登山用スパッツ等を着用する(シャツの裾はズボンの中に、ズボンの裾は靴下や長靴の中)
●足を完全に覆う靴を履く(サンダル等は避ける)
●明るい色の服を着用し(マダニを目視で確認しやすくするため)作業に着用した服等は、直接家の中に持ちこまないようにし、野外活動後は入浴を心がけ、“マダニ”に咬まれていないか確認しましょう。(特に、わきの下、足の付け根、手首、膝の裏、胸の下、頭部は要注意です) もし“マダニ”に咬まれた時の対処法(“マダニ”は吸血前、約0.5cm程度ですが吸血後は1.5cm程度に増大)は以下の通りです。
●無理に引き抜こうとせず、医療機関(皮膚科等)で処置をしてもらいましょう。
●“マダニ”に咬まれた後は、数週間程度は体調の変化に注意が必要です。発熱等の症状がある場合は医療機関で診察が必要です。 (その時医師に伝えることとして、野外活動の日付、場所、発症前の行動)
“マダニ”以外で季節的に用心が必要なのが“蚊”です。特にヒトスジシマカです。(ヒトスジシマカ:背中に1本の白い線とW字状の模様がある、4.5ミリ程の大きさで、5月中旬から10月下旬ころに活動します。雑木林や竹木林などで繁殖し、最近は藪・墓地・公園などにも出現。特に日中に吸血活動をします。活動範囲は50~100メートル程度です。
この“蚊”はデング熱の原因ウイルスとなるデングウイルスを持っている可能性があります。デング熱は人から人へは感染しませんが、デング熱に感染した人の血を吸った“蚊”(日本ではヒトスジシマカ)の体内でウイルスが増殖し、その“蚊”がまた他の人を吸血することで感染が拡大していきます。感染してもすべての人に症状がでるわけではありませんが、高熱や関節痛、目の奥が痛くなるといった症状が1週間から2週間ほど続きます。
冬は“蚊”が減るのでデング熱の発生も収まりますが、翌年また流行する可能性があるので、いつでも“蚊”に刺されないよう注意する、そんな習慣を身につけることが大切です。
最近われわれ皮膚科医の間で『光老化』という言葉が使われています。今回はこの『光老化』という言葉について考えます。
この言葉を簡単に言うと、日光があたる肌や目にみられる老化現象のことです。
よく言う普通の生理的な加齢による老化現象とは異なります。“しみ”、“しわ”、“たるみ”が代表です。また、目においては、白内障が知られております。
太陽光がどのようにして皮膚に影響するかと言いますと、太陽光には紫外線、可視光線、紫外線などがあり、その中でも作用が強いのは紫外線です。とりわけ、B紫外線がもっとも問題ですが、A紫外線も皮膚に深く影響を与えますし、最近では紫外線もさらに皮膚深く到達し(図)、A紫外線とともに“しわ”や“たるみ”を形成すると思われます、日光をあび続けることが皮膚にどう影響しているかと言いますと、高齢者の皮膚で顔とお腹の皮膚を比べて下さい。日光のあたる顔では、大きな“しみ”や深い“しわ”が見られますが、日光が到達しにくいお腹等では、“しみ”や“しわ”は比較的少ないです。これは、日光暴露の時間の違いからくるものと思われます。
なぜこの違いがうまれるのか?皮膚が日光にさらされると、メラミンという色素が作る細胞が表皮の浅い部分で増殖し、その細胞が蓄積される事により“しみ”ができます。これは、光からの生体防御反応でありますが、美容上は歓迎されません。“しわ”に関しては、皮膚のもっと深いところでの話です。小じわは、皮膚表面の乾燥ですが、『光老化』によるものは真皮での反応です。A紫外線や赤外線の作用により、皮膚の張りを保つ弾性線維が変化し、その異常な弾性線維の増加により、皮膚のクッション構造が保てなくなり、元に戻れないくぼみができます。これが大きな“しわ”になります。
我々の皮膚では紫外線にあたる事により、細胞内の遺伝子に傷が入るということが毎日起きています。通常は修復されますが、紫外線の量が多いと破傷した遺伝子が大量にでき、修復が正しくおこなわれない異常な細胞が増加し、最終的に皮膚がんが形成される事になりかねません。しかし、日光には悪い点ばかりではなく、良い面もあります。その良い面を皮膚病の治療に応用しているものもあります。B紫外線のある波長(311nmよ308nm)を皮膚にあてると、免疫反応を抑えることが可能です。つまり、光の害を最小限に抑えて、良い部分だけを利用するのです。免疫が過剰に働いておこる、アトピー性皮膚炎や乾癬、皮膚が白く色が抜ける尋常性白斑などの治療に効果があると言われています。とは言え、健常者にとっては日光の浴びすぎは、害になるのでその対策は必要です。紫外線の強い国では、国家レベルの対策を呼びかけています。基本は、学童期からの日焼け止めの使用と帽子の着用、サングラスなどの眼鏡、車やビルの窓ガラスにも対策をしているようです。しかし、日本においては『光老化』という概念はまだまだ認知されてないようです。特に、日差しの強い5月から真夏にかけては要注意です。
冬将軍到来で、ぼちぼちと寒い日が多くなって参りました。この季節になると心配なのがインフルエンザですが、皮膚科にインフルエンザで受診する方はおられませんが、近年冬に皮膚科外来で遭遇することが増加している疾患が、”しもやけ”正式名を凍瘡であります。 “しもやけ”は局所的な寒冷暴露により引き起こされる炎症反応です。特に、指趾や露出部である、頬、耳、鼻に痒みや痛みを伴う紅斑と腫賬を生じます。
重症の場合は、皮膚がめくれ濆痬を形成することもあります。小児、女性、高齢者や、寒冷環境で手袋や長靴で長時間仕事をする人に多いと言われています。
おそらく、遺伝的に”しもやけ”になりやすい人がいるかと思われます。
成人の場合、膠原病の一症状として”しもやけ”がみられたり、似た症状として、各種の血管炎、血栓症が存在しますので鑑別を必要とします。
治療法と予防ですが生活環境から悪化因子を想定し、生活指導を行ないます。
局所の治療では、皮疹に応じて外用薬と内服薬を処方します。とにかく、放置をしないことです。初期は、治療によく反応します。
外用薬としては、ビタミンE含有軟膏やヘパリン類似物質含有軟膏をメインで使用しますが、重症例ではステロイド外用剤も処方します。濆痬及び二次感染が認められる場合は、抗菌薬含有軟膏を処方します。
最低気温が5℃前後になったら、外出時は手袋、マフラーを装着して、体の抹消部分を冷やさないようにしましよう。
スポーツ等で汗をかいた場合は、水分が蒸発する時に体温まで奪われてしまうので、結果的に手足が冷え”しもやけ”になりやすくなります。汗をかいたら出来るだけ早く水分を拭き取り、着替えをする事が大切です。
水仕事をする特は、ゴム手袋を着用し”しもやけ”を予防しましょう。
マッサージも効果があるかと思います。足趾(指)の手前の方になでるように行ないます。徐々に範囲を広げていきます。入浴時にやるのが良いでしょう。
血行を改善するには、ビタミンE、ビタミンCが多く含む食物をとるようにしましょう。(例えば、ビタミンEならアーモンドやナッツ等、ビタミンCならピーマン、キウイ、柿、レモン等)。
冬が寒いのは当たり前なので、冷え性の人は暖かく過ごしましょう。
最近、食後に唇や口内の痒みで、受診される方が増えているように感じます。
その人たちの多くが、「これってアレルギーですか?」と訊ねられます。
そもそもアレルギーとはなんでしょう?今回は、それについてのお話です。
人間の体には、外からの異物に対する“免疫”という機能があります。“免疫”は、細菌やウイルスから体を守る重要なものです。
しかしながら、この“免疫”が過剰な働きをし、本来、害のない花粉・ほこり・食物等に反応してしまう、これがアレルギー反応です。このアレルギーは遺伝する傾向があり、親御さんにアレルギーがあるとお子さんにも起こる可能性があります。
そのアレルギーで起こる病気の代表が以下のものです。
- ぜんそく:気道が狭くなり呼吸障害が起こり、咳が長くつづきます。
- アトピー性皮膚炎:皮膚に湿疹がみられ、季節により増悪軽快を繰り返します。掻くことで症状は悪化します。
- アレルギー性鼻炎・結膜炎:くしゃみ・鼻水・鼻づまりや目のかゆみ・充血などの症状をおこします。以前は、スギ花粉症が有名でしたが、近年ではキク科やハウスダストによるものなど原因は様々です。
- 食物アレルギー:食べ物が原因となっておこるアレルギーを指します。主な症状として、発疹等の皮膚症状・お腹が痛くなる消化器症状・呼吸が苦しくなる呼吸器症状があります。
- PFS(花粉関連食物アレルギー症候群):果物や野菜を食べることで口・唇・喉などにピリピリ・イガイガ感がおきます。多くの患者さんは、花粉症があります。(上記の患者さん達はPFSの可能性があります。)その代表的なものを以下に示します。
花粉 | 飛散時期 | 花粉と関連性のある食べ物 |
スギ・ヒノキ | 2~5月 | トマト |
ハンノキ・シラカバ | 1~6月 | リンゴ・桃・大豆(豆乳) |
オオアワガエリ・カモガヤ | 4~10月 | メロン・スイカ・キュウイetc |
ヨモギ | 7~11月 | セロリ・ニンジンetc |
ブタクサ | 7~11月 | メロン・スイカetc |
アレルギーを引き起こす物質は、私たちの身近なところに存在し、人によってその物質は様々なのです。また、複数のアレルギーに反応する方もいるのです。
この原因物質を知るということは、治療のひとつであることは間違いありません。
上記のアレルギー疾患においても、薬物療法(内服・外用薬等)と原因アレルゲンの除去や回避が原則であります。このアレルゲンとの接触が続く限り、治療の効果はなかなか現れず、症状は慢性化し治療は困難になっていくでしょう。
アレルギーの原因と思われる物質があるなら、まず医師に相談しましょう。
近年ではすつかりメジャーな言葉となりつつあるAGA(AndrogenicAlopecia男性ホルモンによる脱毛)、市販の育毛剤で治療するだけでなく、病院等で内服液を購入するということが定着してまいりました。今までは、フエナステリド(商品名プロペシア)しか選択肢がありませんでしたが、この度、デュタステリド(商品名ザガーロ)という今まで以上に、効果が期待できる薬が販売されました。これらの薬は、AGAの原因のひとつと考えられている『ジヒドロテストステロン(DHT)』という男性ホルモンの産生を阻害し、ヘアサイクルを正常に近づけることで発毛を促進します。その結果、太く長い毛が増えるのです。
AGAのヘアサイクル
DHTは、髪の毛の成長期を徐々に短くします。そのためGAGでは髪に毛が十分に成長しないまま退行期を迎え、髪の毛が次第に細く短く薄くなります。
今のところ大きな副作用は経験して降りませんが、副作用に際して注意することは以下の通りです。
- 医薬品などで医師の処方箋がないと薬局で購入できません。その際、健康保険は使えませんので自費診療となります。
- お薬の値段は、フェナステリドが1日約256円(後発医薬品有り)、デュタステリドが1日310円ですが、その他医師の診察料と処方箋代、薬局での調剤料が別途かかります。(月に1万円~1万3千円程度が目安です)
- 飲んだらすぐに効果が出る薬ではありません。個人差はありますが半年程度で少し抜け毛が減ったかなあという程度で、発毛が実感できるには数年かかると思われます。最初は、これ以上男性型脱毛を進行させないために飲むくらいの気持ちが必要です。
- 発毛したからといって、内服をやめるとまたもとの状態に戻るのでエンドレスの内服が必要です。
- 女性や子供は服用しないでください。特に妊娠している女性は、薬剤に触れるのも控えてください。男子胎児の生殖器等の発達に影響をおよぼすおそれがあります。
- 前立線癌のPSA検査を受ける方は、数値が低くなる可能性がありますので、必ず担当医師にお知らせください。
◆気になる方は、一度皮膚科医に相談を。