新型コロナウイルスの第3波が心配される中、皆様それぞれが対策を実践されていることと思います。私どものクリニックも、皆様に安心して受診して頂ける用に努力しております。
その中でも、脇汗で苦労されている方も多いと思います。この度、そのお悩みに終止符を打つべく、『原発性腋窩多汗症』の治療薬として、エクロックゲルが認可されました。
そもそも『原発性腋窩多汗症』とは何か?
特に基礎疾患がないにも関わらず、大量の脇汗に悩まされる方です、以下のうちの6症状のうち2項目以上当てはまれば『原発性腋窩多汗症』と診断しております、
- 最初に症状が出たのは25歳以下である
- 左右両方で同じ様に発汗がみられる
- 睡眠中は発汗が止まってしまう
- 一週間に一回以上多汗の症状がでている
- 家族にも同様の患者さんがいる
- 脇汗によって日常生活に支障をきたす
治療法の選択のためには、多汗症の症状の評価が必要です、
以下の1~4の中からあてはまる症状を選ぶ方法で、自覚症状を基に重症度を評価できます。
3~4が重症とされます。
- 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
- 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
- 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
- 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある
『原発性腋窩多汗症』の治療法には、以下のものがあります。
- 汗の出口を塞ぐ働きのある塩化アルミニウム製剤を、わきに塗布する。
- 汗を出す指令を伝える神経に作用するA型ボツリヌス毒素を、わきに注射する。
- 汗をです指令を伝える神経を、手術にて切断する方法
その他神経ブロック、レーザー治療、内服療法、心理療法が上記3つに併用される事があります。
今回、新たに外用療法の一つとして、エクロックゲルが加わることになります。
エクロックゲルの作用機序
エコロックゲルは、有効成分が皮膚から浸透して、エクリン汗腺(皮膚の中にある汗を作る器官ののひとつ)の汗をかくという指令を受け取る部分をブロックすることで、発汗を抑えることが期待できます。
エクロックゲルの使い方
一日一回、以下の手順で両わき全体に塗布します。
- わきの水気をタオルなどでよく拭き取るます。
- ボトルからキャップを外した後、アプリケーターを外します。
- ポンプを押して、アプリケーターの上面に薬液をのせます。
- アプリケーターにのせた薬液をわき全体に塗り広げます。
- アプリケーターに残った薬液は、ティッシュペーパー等で拭き取るか、洗い流してください。
使用上の注意点としては
薬液を塗った後は、乾くまでは寝具や衣服が触れないように注意して下さい。
緑内障や前立腺肥大症の方、わきに傷などがある方、妊娠や授乳中の方は、あらかじめ医師にお伝え下さい。
体質で汗が多いという方はおられますが、汗で人目が気になるなど、日常生活で困ることがある場合は「多汗症」という病気の可能性があります。多汗症に悩む人は、思春期から中年世代までの社会的活動が盛んな年代に多いと言われています。男女の比率の差はほとんどありません。
なかでもワキの多汗症を「腋窩多汗症(えきかたかんしょう)」と言います。ワキの下は汗腺が多いうえに、精神的な刺激と、気候や運動による温熱刺激の両方で発汗が促進されるため、汗を多くかきやすい部位なのです。
特別な要因がないのにワキに多量の汗をかく病気を原発性腋窩多汗症といいます。このような症状のある人は、日本人で5.8%と推定されています。原発性腋窩多汗症の診断基準は下記に示す通りです。(ほかの病気や薬による続発生ものは除外します)
- 原因不明の過剰なワキ汗が半年以上前からつづいている
- さらに、以下の6項目のうち、2項目以上に当てはまる
□ 両ワキで同じくらい多くの汗をかく。
□ ワキの汗が多いため、日常生活に支障が生じる
□ 週に一回以上、ワキに多くの汗をかくことがある
□ このような症状は25歳より前にはじまった
□ 同じ様な症状の家族・親戚がいる
□ 眠っているときはワキの汗がひどくない
重度の腋窩多汗症は、日常生活に支障をきたす場合がありますので、心当たりのある人は、皮膚科を受診して下さい。症状によっては健康保険で治療を受けられることがあります。
原発性腋窩多汗症の治療法には、以下のものがありどの治療法にするかは、患者さんの病状に応じて決定いたします。
塗り薬
塩化アルミニウムなどを有効成分とする薬を、毎日塗りつづけることで、徐々に効果が現れます。持続期間が短く、反復して使用します。
注射(ポツリヌス療法)
交感神経から伝達される汗を出す信号を、注射薬でブロックして、過剰な発汗を抑える治療法です。ボツリヌス菌がつくる天然のタンパク質を有効成分とする薬を、ワキに注射します。1回の注射で効果は4~9ヶ月持続するので、年に1~2回程度の治療で汗を抑えると言われています。症状によっては、健康保険が適用されます。
飲み薬
抗コリン薬や漢方薬があります。塗り薬や注射薬とは異なり、体の広い範囲に効果を及ぼすことが特徴です。専門家によるガイドラインでは、塗り薬・イオントフォレーシス(発汗部位を水道水に浸し弱い電流を流して、発汗を抑える治療)・注射薬で効果がない場合や、これらの治療がおこなえない時などに試みてよい治療と位置づけられています。
手術
神経を切断する手術などがあり、種類によっては健康保険が適用されます。多汗症の症状が重く、塗り薬・イオントフォレーシス・注射・飲み薬で効果が見られない時に適応となる場合があります。
その他
神経ブロック、レーザー療法、心理療法などがあります。
以上で何かしら気になることがある人は、一度皮膚科医にご相談下さい。