帯状疱疹ワクチンについて

昨今のテレビCMでお馴染みかと思いますが、帯状疱疹ワクチンを当クリニックでも扱う事になりました。帯状疱疹ワクチンには2種類あります。
乾燥弱毒性水痘ワクチンである『ビケン』と、乾燥組換え帯状疱疹ワクチンである『シングリックス』であります。 ビケンは従来小児を中心とした水痘予防ワクチンですが、2016年3月に、「50才以上の者に対する帯状疱疹の予防」としての効能が追加されました。
シングリックスは、2018年3月に新規の帯状疱疹ワクチンとして、
「50才以上の者に対する帯状疱疹の予防」という目的で製造販売承認を取得しました。
簡単にまとめると、ビケンは病原性を弱めたウイルスを成分としたワクチン、シングリックスは病原性を無くしたウイルスの一部を成分としたワクチンであります。
この二つのワクチンを50才以上の摂取希望者に、選んでいただくのですが、なかなか選びづらいかと思いますので、それぞれの特徴を記載します。

  1. 用法用量はビケンが1回0.5mlを皮下注射、シングリックスは0.5mlを2ケ月間隔で2回筋肉注射します(2回目は6ヶ月以内に)。
  2. 主な副反応はビケンが注射部位の赤み・掻痒感・熱感・疼痛等々インフルエンザワクチンに近いイメージです。
    シングリックスは注射部位の痛みが78%、赤み38%、腫れ26%注射部位以外は筋肉痛40%、疲労39%等、こちらは新型コロナウイルスワクチンに近い感じです。
  3. 費用ですがビケンは8400円(名古屋市の方は4200円の助成金あり)、シングリックスは1回接種で21600円(名古屋市の方は10800円の助成金あり)
    ※生活保護世帯・市民税非課税世帯・中国残留邦人に属する方は、自己負担金の免除制度があります。
  4. 効果の持続期間はビケンが摂取後約5年、シングリックスが約10年と言われております。
    尚、ビケンは病原性を弱めているとは言え、生ワクチンですので、「明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する者及び免疫抑制をきたす治療を受けているものには摂取してはならない」とあります。

以上のことをふまえて、摂取希望の方はどちらのワクチンが良いか、ご判断下さい。
ご不明な点があれば、当クリニックにお問い合わせください。

帯状疱疹に新薬登場

この度、帯状疱疹(たいじょうほうしん)に対して『アメナリーフ錠』という内服薬の処方が可能になりました。この薬は、日本で創製されたお薬です。

従来の帯状疱疹のお薬は、1日5回ないしは、3回内服しておりましたが、このお薬は1日1回投与で十分に効果のあるお薬です。では帯状疱疹とは何か?ご存知の方もおられると思いますが、この機会にお話したいと思います。

帯状疱疹の特徴は:身体の左右どちらか一方に、ピリピリとさすような痛み、これに続いて赤い斑点及び小さな水ぶくれが帯状(おびじょう)に現れる病気です。帯状疱疹は、過去に感染した“みずぼうそう(水痘)”のウイルスである水痘・帯状疱疹ウイルス が、身体の中に潜んでおり、体が疲れたりして免疫力が落ちた時に、そのウイルスが再活性しておこります。ですから、誰でも帯状疱疹になる可能性があります。

発症年齢:60歳を中心に比較的に高年者に見られる病気ですが、若い人でも過労やストレスが原因で発症することも珍しくありません。通常は生涯に1度しか発症せず、免疫力の低下している患者さんを除くと再発する可能性は低いと言われています。

主な発症部位:身体の左右どちらか一方の神経に沿って帯状に現れます。胸から背中にかけて出現することが多く、全体の約6割が上半身に発症しております。また、顔面(特に眼囲)も発症しやすい部位です。

経過:赤い斑点の現れる数日前から、皮膚の違和感やピリピリ感などの神経痛(神経においてもウイルスが増殖して炎症が起こっているため)を伴うことがあります。その後、強い痛みと伴に身体の片側に沿って、帯状のやや隆起した赤い斑点が現れます。つづいて赤い斑点上に水ぶくれ(水ぶくれの大きさは栗粒大~小豆大で、中央部にくぼみが見られます)が現れ、その水ぶくれは、やがて破れてただれた状態になり、かさぶたへと変化します。皮疹が治ったあとも、後遺症として帯状疱疹後神経痛という、やっかいな痛みが残ることもあります。

後遺症:発熱や頭痛が見られるこちがあります。また、顔面の帯状疱疹では、角膜炎や結膜炎などを起こすこともあります。その他、まれに耳鳴りや難聴、顔面神経マヒなどがあります。

治療は、最初にお話した抗ヘルペス薬(アメナリーフ等)を中心におこなわれます。このお薬はウイルスの増殖を抑えることにより、急性期の皮膚症状や痛みなどをやわらげ、治療までの期間を短縮します。さらに合併症や後遺症を抑えることも期待されます。また、痛みに対して、消炎鎮痛剤が使われたり、強い痛みがつづく場合は神経ブロックという治療が行われることがあります。

日常生活の注意点として以下の項目があります。

●出来るだけ安静を心がけましょう。

●患部を冷やさないようにしましょう。

●水ぶくれは破らないように気をつけましょう。

●小さな子供との接触は控えましょう。

※帯状疱疹は早期に適切な治療を行うことで、症状を軽くし、合併症や後遺症である帯状疱疹後神経痛のリスクを減らすことができます。
帯状疱疹かなと思ったら、はやめの皮膚科受診をしてください。

帯状疱疹後神経痛とは?

毎日暑い日がつづいておりますが、皆さん体調はいかがでしょうか?猛暑がつづくと、体が疲れやすくなるものです。その結果、免疫力が落ち、夏風邪などをひいてしまいます。我々皮膚科の外来には、帯状疱疹の患者さんが気のせいか多い気がします。今回は、その帯状疱疹、特に帯状疱疹後に起こる神経痛について少しお話いたします。

  1. 帯状疱疹は、幼少期などにかかった水ぼうそうのウイルスが背骨の神経の中に何年も潜んでおり、ストレスなどで体が疲れ、免疫力が低下した時に発症します。帯状疱疹の症状としては、痛みと小さな水ぶくれが出現します。この症状は、抗ウイルス剤の内服で治りますが、ご高齢の方などは、皮膚の症状が消えた後も傷みが残る場合があります。これを帯状疱疹後神経痛といいます。
  2. なぜ痛みがあるのでしょう?この痛みは、皮膚症状が出現する前に現れることが多く、ウイルスが神経を傷つけるために起こるのです。ピリピリとした痛みで、服がすれただけでもかなりの痛みを感じます。しかし、若い人などは、夜間はよく寝れたり、何かに集中しているときは痛みを感じないことが多いようです。
  3. 帯状疱疹は抗ウイルス剤という決まった治療法がありますが、帯状疱疹後神経痛に関しては決まった治療法はありません。
    それぞれの患者さんに合った治療法が選ばれ、組み合わされているのが現状です。また、治療を一回、二回受けたからすぐに軽快することはまれであるため、前向きに考え、根気よく治療を続けることが必要であります。
    治療内容ですが、内服治療薬は三環系抗うつ薬、抗てんかん薬(ガバペチン)や抗けいれん薬(ペレガバリン)があります。現在、非ステロイド抗炎症剤(NSAIDS)は効果がないと考えられております。 持続性の痛み対策として、体性神経ブロック、イオントフォレーシス、低出力レーザー治療が行われております。(当クリニックでは施行不可能なので大学病院等に紹介しております。
  4. 家庭における対処法として、
    入浴:体が温まり血液循環がよくなるので痛みがやわらぎます。他の病気で入浴制限がなければ、積極的に入浴することをお勧めします。
    保温:寒さは痛みを増強させる為、冬には使い捨てカイロなどで保温し、夏には冷房の冷たい風は直接あたらないようにしましょう。
    患部刺激:痛みに過敏になっている時は、衣服などが触れただけでも痛みを感じることがあります。痛みを感じる患部に、サラシや包帯を巻いたりしてから、衣服をきるなど工夫するとよいでしょう。ストレス・疲労:痛みが気になり、不安になり、そのストレスから痛みが増強すると言うことがあります。
    痛み以外のことに気が向くように、趣味や仕事に熱中することは重要と考えます。くれぐれも、家にひとり閉じこもらないようにしましょう。
    夜は睡眠を十分にとつて、リラックスするように心がけましょう。