本邦初!乾癬患者専用シャンプー薬登場

この度、わが国において初めてとなる、ステロイド剤であるクロベタゾールプロピオン酸エステルを有効成分とする『頭部の尋常性乾癬』の治療用シャンプー外用薬(コムクロシャンプー)が処方可能となりました。

特徴

乾いた頭皮に使用するシャンプー用外用剤

使用方法

STEP1

  1. 広げた手のひらに、お薬(シャンプー)を出します。
    (使用量の目安は500円玉3枚分です)
  2. 手のひらからお薬をとり、皮診のある所に塗ってください。
  3. 頭 皮の皮疹部全てに塗れるまで1.~2.を繰り返してください
    (万が一、目に入ったり、まぶたについた場合はすぐに水で洗い流してください)
  4. すべての患部に塗り終わったら、爪を立てずに患部を軽くマッサージして下さい)
    最後に手をよく洗いSTEP1は終了です。

STEP2

お薬(シャンプー)を塗ってから、15分間そのまま待ちます。

STEP3

お湯または水をかけて、爪をたてずにやさしくよく泡立てます。
(ゴシゴシ洗いはNG!乾癬では、こすったり掻くという行為は、症状を悪化させますので、爪を立てないように注意しましょう)

STEP4

流し残しのないよう頭皮、手、全身を十分に洗い流します。
(洗い流す際、お薬が目に入らないように注意してください)
(コムクロシャンプーを洗い流すために、ほかのシャンプーを使用する必要はありません。髪の毛のお手入れのために追加でほかのシャンプーやリンス等を使用しても構いません)

以上使用方法の流れです。頭皮の乾癬がひどい患者さんは、ステロイド剤の長期外用による副作用の心配等があつたと思いますが、このシャンプーという発想によりいくらか副作用が軽減されると確信しております。

乾癬(かんせん)について

冬将軍到来で、毎日寒い日々がつづいておりますが、みなさまは風邪などひかれていないでしょうか?今回は、乾癬(かんせん)について勉強したいと思います。
乾癬とは、「皮膚の炎症」と「表皮の角化異常」の2つの病態があります。つまり、皮膚が赤く盛り上がり、その表面に銀白色のかさぶた(鱗屑)が厚く付着して、やがてそれがフケのようにポロポロと剥がれ落ちる(落屑)という状態です。かゆみに関しては、個人差があり、ほとんどない人もいれば、かなりのかゆみを訴える方もおられます。病気を放置してしまうと、皮疹が拡散融合して大きくなってしまいます。また、爪の変形が起こることもしばしば見られます。 乾癬患者さんの皮膚の正常部分を、掻いたり傷つけたりすると、その部分に乾癬が出現することがあります。これを皮膚科の専門用語で「ケブネル現象」と言います。 乾癬は、その症状の違いから5つの種類があると言われています。

  1. 尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん):もっとも多く見られるタイプで、上記の病状が頭、肘、膝を中心に全身に散見されます。
  2. 膿胞性乾癬(のうほうせいかんせん):全身の皮膚が赤くなり、その中に「うみ(膿疱)」を持った皮疹が出現し、発熱や倦怠感を合併します。放置すると全身のむくみが現れ、入院での治療が必要になってしまいます。
  3. 関節症性乾癬((かんせつしょうせいかんせい):皮膚症状に加え、関節リュウマチのように関節が腫れたり、痛んだりします。重症化すると、関節な変形がおこり、日常生活に支障が出てきます。
  4. 滴状乾癬(てきじょうかんせん):風邪などにより扁桃腺炎をおこして、それが悪化した時に、全身に水滴様の皮疹が全身に出現します。
  5. 乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう):尋常性乾癬のコントロール不良により、全身のほとんどが赤くなる状態です。皮膚の機能障害により体温調節ができなくなり、発熱や倦怠憾を生じます。症状によっては、入院となることもあります。

乾癬の原因は、まだよくわかっていないのが現状です。遺伝的要因にストレス、風邪、喫煙、飲酒、食生活などの外的要因、それに高脂血症、肥満などの内的要因が加わって発病すると考えられています。また、最近の研究で、上記の問題だけでなく、免疫系にも異常が生じて炎症がおきているのがわかってきました。つまり、本来なら細菌やウイルスに対する防御システムが、何らかの要因で正しく機能しなくなり、自分の細胞を攻撃し、炎症を引き起こすようになったと思われます。
乾癬の治療法には大きく分けて、4つの方法があります。外用療法、内服療法、光線療法、生物学的製剤です。(クリニックレベルでの治療としては、外用療法内服療法がメインになってくると思います。) 外用療法は乾癬治療の基本と考えます。主にビタミンD3外用薬、ステロイド外用薬を用います。
ビタミンD3外用薬:表皮の新陳代謝の異常を抑え、正常な皮膚に導く薬です。効果がでるまでに時間がかかるため、根気よく外用を続けることが大切です。ステロイド外用薬:炎症(皮膚の赤み)を起こす細胞の働きを抑える薬です。速効性があり、病状に応じて薬の強さを使い分けていきます。ただし、医師の指示に従わず使用していると、塗布部位の毛細血管拡張や、皮膚が薄くなったりすることがあります。

※昨年の秋により日本でも、ビタミンD3外用薬とステロイド外用剤の合剤が処方可能となりました。当クリニックでも、たくさんの乾癬患者さんに処方したところ、かなりの効果を実感しております。
内服薬は、外用薬のみではコントロールが難しい時に、用いることが多いですが、単独で用いることもあります。
レチノイド(エトレチナート):ビタミンA誘導体で、皮膚の過剰な増殖を抑える効果があります。妊娠中の胎児に影響をあたえるので、服用中はもちろん服用中止も、男性は6ヶ月、女性は2年の妊娠をしてもらいます。
シクロスポリン:乾癬の悪化因子の一つである、過剰な免疫反応に作用致します。副作用として、血圧上昇、多毛、腎機能障害等がありますので、定期的な血圧測定、血液検査が必要です。
光線(紫外線)療法は、光源ライトを用いて、症状のあるところを中心に紫外線を照射して過剰な免疫反応を抑える治療です。紫外線にはいくつかの種類があり、乾癬の治療では長波長紫外線(UVA)と中波長紫外線(UVB)が用いられます。まれに日焼け色素沈着があります。
生物学的製剤は、大学病院や市民病院などの大きな施設で受ける治療と言えるでしょう。免疫に関わる物質の働きを弱め、乾癬の症状を抑える薬です。現在、皮下注射と点滴の2種類があります。これまでの治療で効果の得られない患者さんが対象になります。下記の患者さんには、投与ができないことがあります。

  • 重い感染症のある方
  • 結核や肝炎で治療している方
  • 過去に生物学的製剤の成分でアレルギーを起こしている方

この治療を行うと免疫が抑えられるため、感染症にかかりやすくなります、主な副作用として、喉の痛みや咳、発熱などの風邪症状、発疹や体のかゆみなどのアレルギー様症状、体のだるさです。
乾癬は増悪軽快を繰り返す疾患です。他人に感染する心配は全くありませんが、日常生活に支障をきたすことがあります。それだけに、乾癬治療の目標は、患者さん一人ひとりの症状や、ライフスタイルの合ったと療法を選択することが重要と考えます。