これってアレルギーですか?

最近、食後に唇や口内の痒みで、受診される方が増えているように感じます。
その人たちの多くが、「これってアレルギーですか?」と訊ねられます。
そもそもアレルギーとはなんでしょう?今回は、それについてのお話です。
人間の体には、外からの異物に対する“免疫”という機能があります。“免疫”は、細菌やウイルスから体を守る重要なものです。
しかしながら、この“免疫”が過剰な働きをし、本来、害のない花粉・ほこり・食物等に反応してしまう、これがアレルギー反応です。このアレルギーは遺伝する傾向があり、親御さんにアレルギーがあるとお子さんにも起こる可能性があります。
そのアレルギーで起こる病気の代表が以下のものです。

  1. ぜんそく:気道が狭くなり呼吸障害が起こり、咳が長くつづきます。
  2. アトピー性皮膚炎:皮膚に湿疹がみられ、季節により増悪軽快を繰り返します。掻くことで症状は悪化します。
  3. アレルギー性鼻炎・結膜炎:くしゃみ・鼻水・鼻づまりや目のかゆみ・充血などの症状をおこします。以前は、スギ花粉症が有名でしたが、近年ではキク科やハウスダストによるものなど原因は様々です。
  4. 食物アレルギー:食べ物が原因となっておこるアレルギーを指します。主な症状として、発疹等の皮膚症状・お腹が痛くなる消化器症状・呼吸が苦しくなる呼吸器症状があります。
  5. PFS(花粉関連食物アレルギー症候群):果物や野菜を食べることで口・唇・喉などにピリピリ・イガイガ感がおきます。多くの患者さんは、花粉症があります。(上記の患者さん達はPFSの可能性があります。)その代表的なものを以下に示します。
花粉飛散時期花粉と関連性のある食べ物
スギ・ヒノキ2~5月トマト
ハンノキ・シラカバ1~6月リンゴ・桃・大豆(豆乳)
オオアワガエリ・カモガヤ4~10月メロン・スイカ・キュウイetc
ヨモギ7~11月セロリ・ニンジンetc
ブタクサ7~11月メロン・スイカetc

アレルギーを引き起こす物質は、私たちの身近なところに存在し、人によってその物質は様々なのです。また、複数のアレルギーに反応する方もいるのです。
この原因物質を知るということは、治療のひとつであることは間違いありません。
上記のアレルギー疾患においても、薬物療法(内服・外用薬等)と原因アレルゲンの除去や回避が原則であります。このアレルゲンとの接触が続く限り、治療の効果はなかなか現れず、症状は慢性化し治療は困難になっていくでしょう。
アレルギーの原因と思われる物質があるなら、まず医師に相談しましょう。

皮膚からもアレルギー

季節ははるになり、お花見のシーズンになっていますが、同時にアレルギーの季節になったと言っても過言ではないでしょう。花粉症持ちの人には辛い季節です。
花粉症と言えば、鼻におこるアレルギー性鼻炎を思い浮かべる人が多いかと思いますが、他の症状として、目のかゆみ、喉のイガイガした感じや皮膚の露出した所のかゆみ(顔のかゆみ)などがあります。これらの原因(アレルゲン)として有名なのがスギ花粉です。しかし、実際のところスギ以外の多くの花粉やダニ、カビ、ペットなどのアレルゲンでもこれらの症状は起こっている可能性があります。もしかしたら症状を放置することで、季節に関係ない通年性アレルギーに移行している可能性があるかと思います。もし、花粉症かと思われる症状が出てきたら、なるべく早く病院を受診することをお勧めします。
ではどうしてアレルギー反応が起こるのでしょう。最近の皮膚の研究では、口や鼻からのアレルゲンの浸入だけでなく、皮膚もアレルギー発症のルートであることがわかってきました。皮膚は、単に異物から体を守る組織というイメージがありますが、アレルゲンが皮膚を介して体内に侵入し、アレルギー反応を引き起こすことがあるのです。これを、経皮感作といいます。
例えば、海外などでは、ピーナッツオイル入りのの保湿クリームを使用した子供や、家庭内に落ちているピーナッツのかけらなどが原因で、ピーナッツを食したことがない子供にピーナッツアレルギーが発症したという報告があります。日本では、小麦粉成分を含んだ洗顔石鹸を使用した人達に、突然小麦アレルギーがおこってしまう事件がありました。これも経皮感作によるものと考えられております。
では、なぜ経皮感作がおこるのでしょう?皮膚の最外層には、外質層があり、皮膚膜とともに色々な外敵から、身を守るバリアとして働いています。しかし、湿疹などの皮膚に異常が起こると、バリア機能がおかしくなり、外からの刺激に対して非常に過敏なってしまいます。つまり、様々なアレルギー物質が体内に侵入しやすくなるということです。このような事が、日々積み重なり経皮感作が起こると考えられています。
近年我々医師の間では、アレルギーマーチという言葉が使われております。これは、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎や喘息といった異なる症状が成長にともなって出現する状態です。この原因として、上記の皮膚のバリア機能障害が注目されております。経皮感作を起こさない為には、以下のことに注意しましょう。

  1. 皮膚のバリア機能を保持する為に・・・
    • 石鹸の使い過ぎに注意しましょう。
    • ナイロンタオルで強く擦るのはやめましょう。
    • 乾燥肌の人は、入浴後に保湿剤を塗りましょう。
    • 布団、ソフアー、クッション、むいぐるみなどに付着しているアレルギー物質などは、マメに掃除をしましょう。
  2. 乳児期に気おつけることとしては・・・
    子供は、大人よりも保湿能力が低いので、外部の刺激に対して非常に敏感です。よだれや食べ物が、口の周りについたまま放置すると、そこから経皮感作が起こる可能性があるので、乳幼児の口の周りは、きれいにすることが大切です。