気候も暖かくなり、また今年も桜の季節になりました。みなさまの皮膚の状態はいかがでしょうか?今回は、暖かくなると増える、虫や植物による皮膚炎トラブルのお話です。
皮膚炎を引き起こす虫はさまざまな場所に生息しています。室内には蚊、イエダニ、ムカデ、トコジラミ、家の周辺や公園には、毛虫、ネコノミ、蜂、クモ、高原や河原には、ブヨやアブ、山などにはマダニ、ツツガムシ、などがいます。この中で最近、皮膚への被害が増えているのがトコジラミです。トコジラミが増加している原因として、交通機関の発達によって、人の行動範囲がグローバル化した事で、国内で衛生状態のよいホテルや旅館でも、旅行者のスーツケースなどを介して持ち込まれるようになったと考えられています。その宿泊先で刺されたり、鞄に紛れて自宅に持ち込んでしまうと言う事もあるでしょう。このような事が起こらないように、鞄の周囲に“虫よけスプレー”を散布したり、夜間は鞄のふたを必ず閉めるようにしましょう。もし、持ち帰ってしまったら、衣類は乾燥機で30分以上熱処理したり、ビニール袋に持ち物を入れてトコジラミ用の殺虫剤を散布して下さい。危険な虫刺されとして注意が必要なのが、“アナフィラキシー”を引き起こす蜂やムカデです。これらに刺されたら、まずは安全な場所に移動し、安静にして刺された部位を冷やし、可能ならばポイズンリムーバーで毒を吸出しましょう。局所の炎症症状にはステロイドの外用薬を散布し、炎症症状が強い場合にはステロイドの全身投与を行ないます。じんましん、吐き気(嘔吐)、呼吸困難などが出現した場合は、速やかに救急病院を受診しましょう。被害の予防のためにも、外野での作業時は、蜂の巣に注意し、むやみに巣に近づいたり刺激しないようにしましょう。マダニやツツガムシの場合は、病原体を媒介するので要注意です。山などで過ごした日数から数週間後に発疹や発熱が認められれば、すぐに医療機関を受診してください。毛虫(ドクガ類)も暖かくなると被害の多い皮膚炎です。ドクガの幼虫である毛虫には、数十万本以上の微細な毒針毛があり、幼虫の脱皮殻や成虫の尾端部にも付着しています。この毒針毛が人の皮膚に触れ、中の毒成分が皮膚に注入されると、アレルギー反応により、特微的な赤く隆起した皮疹を多数作ります。治療の基本は、ステロイド薬の外用ですが、炎症反応が強い場合は、ステロイド薬の内服を併用する場合があります。対策としては、庭木の手入れの際に被害を受ける事が多いので、ツバキやサザンカに見られる毛虫には注意が必要でしよう。冬でも幼虫の脱皮殻に触れると皮膚炎を生じます。毒針毛に触れてしまったら、粘着テープで皮膚に付着した毒針毛を除去し、石鹸で洗い流しましょう。
植物ではウルシやハゼ、マンゴー、ギンナン、サクラソウ、アロエ、キクなどに触れた後に、湿疹が出現した場合も、ステロイド剤の適用などで、医療機関の受診が必要です。
これからの季節、野外での活動、旅行にはご注意を!