汗とアトピー性皮膚炎の関係

季節は夏に向かっており、徐々に汗ばむ季節となってまいりました。
今回は、その汗についてのお話です。
汗は、人間にとって大切な役割を担っています。

  1. 体温調整 体の熱を発散し、体温を下げます。
  2. 免疫調整 汗に含まれる物質が、細菌などから皮膚を守ります。
  3. 保湿 皮膚の水分量を保持し、うるおいを与えます。

人間が生きていく上で必要な汗ですが、以前は、アトピー性皮膚炎(以下AD)を悪化させる原因の一つと考えられてきました。ところが最近の新たな研究で、汗を十分にかけていない事が、ADを悪化させている原因の一つと言われています。
どういう事かといいますと、AD患者さんでは、発汗量が少なく、発汗するまでに時間がかかるといった特徴が見られるようです。またAD患者さんが発汗により痒みが起こるという不安から、自然と汗をかく機会を減らす、つまり、発汗量が少ない原因にもなっていると考えます。
このように、AD患者さんでは発汗量が少ないので、“汗“本来の働きが十分に発揮されることがないので、AD症状の悪化が起こると考えます。
つまり、汗をかくことで、皮膚にうるおいがもどり、汗に含まれる物質で皮膚を細胞から守り、皮膚の温度を下げ、皮膚の炎症の悪化を予防するのです。ただ汗をかいた時に、かゆみを感じるのも事実です。
では、いかに汗と上手に付き合うかですが、汗をかいたら、おしぼりで拭き取るか、シャワーや流水で洗い流すことを心がけましょう。
どうしても洗い流す事ができない状況なら、汗で濡れた衣装は、着替えるなどの対策をしましょう。汗を洗い流した後は、保湿剤の外用は忘れないようにしましょう。
特に、AD患者さんでは、汗を洗い流して終わるのではなく、医師から処方された、ステロイド外用薬、保湿剤の外用はしっかり行いましょう。
汗をかくためには、毎日40℃程度のお風呂に入るように、この温度は、皮膚のバリア機能を回復させると言われています。石鹸を使う時は、よく泡だて、過度に擦らず、十分に洗い流しましょう。
また、運動は激しいものを急に行うのではなく、軽いものからはじめ、休息をとり水分補給をしっかりして、熱中症には注意しましょう。

まとめ

以前は、アトピー性皮膚炎にとって、汗は、悪いものという印象がありました。しかし、汗の働きを考えると、人の生活において必要なものであります。アトピー性皮膚炎患者においては、治療をしっかりと行い、そのうえで、汗をかける日常生活をおくりましょう。
アトピー性皮膚炎の治療等でわからない事がある時は、われわれ皮膚科医に相談して下さい。