アトピー性皮膚炎の新しい治療

アトピー性皮膚炎の治療は、皮膚のバリア機能を補う治療と、炎症を抑える治療の組合せが必要と考えます。バリア機能を改善する治療としては、保湿剤などの外用、炎症を抑える治療としては、ステロイドの内服・外用、免疫抑制剤内服・外用が考えられます。我々皮膚科医は患者さんの状態を理解し、継続して取り組める治療を選択してまいりました。アトピー性皮膚炎の原因はまだ明らかになっておりませんが、皮膚のバリア機能が低下する体質や、アレルギーを起こしやすいアトピー素因が原因のひとつとして考えられています。アトピー性皮膚炎の皮膚では、外からの異物の侵入を防ぐバリア機能が低下し、皮膚への刺激やアレルギーによる皮膚炎を起こしやすくなっています。
皮膚炎による痒みのため、掻破が起こり皮膚を傷つけ、更に炎症がひどくなります。
この時皮膚炎の内部では、Th2細胞という免疫細胞が増えた状態になっています。そして、Th2細胞が産生する『IL-4』と『IL-13』という物質(サイトカイン)が炎症を起こしたり、痒みを誘発したり、皮膚のバリア機能に障害を与えます。
1年半程度前より、全身療法の選択肢のひとつとして、ヂュピクセントという生物学的製剤の使用が可能となりました。デュピクセントは『IL-4』と『IL-13』という物質の働きを直接抑えることで、皮膚の2型炎症反応を抑制する新しいタイプのお薬です。皮膚の内部に起きている炎症反応を抑えることで、かゆみなどの症状や、皮疹などの皮膚症状を改善します。
この治療薬(注射)のメリットは、医師の判断の下、患者さんご自身が注射を行う『自己注射』も可能な事です。メリットとして、通院時間の制約や負担が減り、仕事や旅行などの活動範囲が広がるかと思います。
投与においての注意が必要な方は

  • 妊娠またはその可能性のある方、授乳中の方
  • 高齢の方
  • 喘息などのアレルギー疾患のある方(デュピクセントの投与により、他のアレルギー性疾病が変化する可能性があります。その疾患の主治医と連携しながら治療を進める必要があります。)
  • 生ワクチンを接種する予定の方
  • 寄生虫感染のある方

デュピクセントは投与開始時のみ、2本を皮下注射します。その後は2週間に一回、1本を皮下注射します。

副作用としては、投与後に過敏反応が現れることがあります。次の症状が現れたら、投与を中止し速やかに主治医に相談してください。

ふらつき感、息苦しさ、心拍数の上昇、めまい、嘔気、嘔吐、皮膚のかゆみ赤み、関節痛、発熱など他に注射部位に、発赤、かゆみなどが見られたり、口唇などにヘルプス、目に結膜炎が見られる場合があります。稀でありますが、免疫を抑えるため、寄生虫感染を起こしやすくなる可能性があります。

その他の問題点として新しい治療だけに、治療費が高額な事があります。目安としては、以下の通りです。

ただし、高額治療費制度等の対象となりますので、ご興味のある方はクリニックで時間を取って説明したいと思います。
以下の電話番号でも専任スタッフが、24時間365日いつでもサポートします。
デュピクセント相談室:0120-50-4970
*アトピー性皮膚炎の重症度及び治療歴によっては、投与の対象にならない場合もあります。